任意売却と競売の違い|比較表でわかる7つの差を実務者が解説

「競売開始決定通知」が届いた。あるいは、「このままだと競売になります」と金融機関から言われた。突然のことで、頭が真っ白になっている方もいるかもしれません。

この記事では、任意売却と競売の違いを7つの項目で比較します。両方の仕組みを正確に知ることで、どちらが自分にとって有利かを判断できるようになるはずです。

一目でわかる比較表

一目でわかる比較表

まず全体像を把握してください。

項目 任意売却 競売
売却価格 市場価格に近い金額 市場価格の5〜7割
残債の返済 分割返済の交渉が可能 一括請求されることがある
プライバシー 通常の売却と同じ形で進行 BIT・裁判所公告で公開
引っ越し時期 買主と交渉して調整可能 裁判所の命令で強制退去
引っ越し費用 売却代金から控除交渉可能 原則として確保できない
手続きの主導権 所有者自身の判断で進行 裁判所が主導
持ち出し費用 原則なし(売却代金から控除) 原則なし(ただし明け渡し費用は自己負担)

以下、各項目について詳しく見ていきます。任意売却の基本についてはS1 任意売却とはの記事へをご覧ください。

競売とは何か——法的な仕組みを知る

競売とは何か——法的な仕組みを知る

競売(けいばい)は、民事執行法に基づく裁判所の強制売却手続きです。

住宅ローンの返済が長期間滞ると、債権者(金融機関や保証会社)は裁判所に「担保不動産競売」を申し立てます。申立てが認められると、裁判所は「競売開始決定通知」を債務者に送付し、手続きが始まります。

手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 競売申立て:債権者が裁判所に申し立てる
  2. 競売開始決定:裁判所が決定を出し、不動産に差押えの登記がされる
  3. 現況調査:裁判所の執行官と不動産鑑定士が自宅を訪問し、調査する
  4. 期間入札の公告:BIT(不動産競売物件情報サイト)と裁判所の掲示板で物件情報が公開される
  5. 入札・開札:最高額の入札者が落札する
  6. 売却許可決定:裁判所が落札を正式に認める
  7. 代金納付・引き渡し:落札者が代金を納付し、所有権が移転する

注目すべきは、この手続きにおいて所有者の意思はほとんど反映されないという点です。売却価格も、引き渡し時期も、裁判所の手続きに従って決まります。

売却価格の差——数百万円の分かれ道

売却価格の差——数百万円の分かれ道

競売とこの方法で最も大きな差が出るのが売却価格です。

競売での売却基準価額は、裁判所が選任した不動産鑑定士の評価額をもとに決まります。この評価額は市場価格そのものではなく、「競売市場修正」として2〜3割の減価が適用されます。さらに、売却基準価額の8割が「買受可能価額」(最低入札価格)となるため、実際の落札価格は市場価格の5〜7割にとどまるのが一般的です。

具体例で見てみましょう。

任意売却 競売
市場価格 1,500万円 1,500万円
想定売却額 1,300〜1,500万円 750〜1,050万円
ローン残債2,000万円の場合の残債 500〜700万円 950〜1,250万円

差額は数百万円にのぼります。この差は売却後に背負う残債の大きさに直結し、生活再建の難易度を大きく左右します。

残債はどうなるか

残債はどうなるか

売却額でローンを完済できない場合、残債が発生します。この残債の扱いが、任意売却と競売で異なります。

任意売却の場合:売却前の段階で債権者と交渉し、残債の返済条件を協議します。多くの場合、月々1万〜3万円程度の分割返済に応じてもらえます。債権者としても、競売より高い金額で回収できるため、残債について柔軟な対応をとる傾向があります。

競売の場合:落札額が債権者に配分された後、残債について一括請求されることがあります。もちろん、その後に分割返済の交渉は可能ですが、この方法と比べると残債額が大きくなるため、条件が厳しくなりがちです。

いずれの場合も、返済が困難な場合は自己破産や個人再生といった法的整理が選択肢に入ります。法律的な判断が必要な事項については、必ず弁護士にご確認ください。

プライバシー——誰に知られるか

プライバシー——誰に知られるか

この違いは、特に気にされる方が多いポイントです。

競売の場合:物件情報がBIT(不動産競売物件情報サイト)にインターネット公開されます。住所、外観写真、間取り、室内の写真が掲載されるほか、裁判所の掲示板にも公告されます。さらに、入札を検討する不動産業者が近隣で聞き込み調査を行うこともあります。「近所に知られたくない」という希望は、競売では叶えることが難しいのが現実です。

任意売却の場合:通常の不動産売却と同じ形で販売活動を行います。BITへの掲載も裁判所の公告もありません。販売方法も相談のうえ決められるため、たとえば「ネットには載せず、購入希望者リストから打診する」といった配慮も可能です。

引っ越し・生活への影響

引っ越し・生活への影響

引っ越し時期について

この方法では、売買契約の条件として引き渡し日を交渉できます。通常は契約から1〜2ヶ月後の引き渡しが一般的で、次の住まい探しや引っ越しの準備に必要な時間を確保できます。お子さんの学期や転校のタイミングに合わせることも、交渉次第で可能です。

競売では、落札者への所有権移転後に「引渡命令」が出されます。任意に退去しない場合は強制執行(明け渡しの断行)となり、執行官が来訪して荷物を運び出します。この段階に至ると、退去時期を自分で決めることはできません。

引っ越し費用について

この方法では、売却代金から10万〜30万円程度の引っ越し費用を控除するよう、債権者と交渉するケースがあります。必ず認められるわけではありませんが、当社の経験では多くのケースで一定額が確保できています。

競売では、引っ越し費用の控除という仕組み自体がありません。落札者が「立退料」を支払うケースもまれにありますが、法的な義務はなく、期待できるものではありません。

競売を回避するための期限

競売を回避するための期限

「まだ間に合うのか」——これが、多くの方が最も知りたいことだと思います。

結論から言えば、競売の入札期日までが実質的な期限です。

段階 任意売却への切り替え
滞納が始まった段階 十分間に合う。選択肢が最も広い
期限の利益喪失通知を受けた段階 まだ間に合う。早急に動く必要あり
代位弁済が完了した段階 間に合うが、時間との戦い
競売開始決定通知を受けた段階 可能だが、3〜4ヶ月以内に成約が必要
入札期間に入った段階 取り下げは困難。入札前に成約できれば可能性あり

競売の申立てから入札まではおおむね6〜12ヶ月ですが、裁判所の状況によって異なります。北海道内の各裁判所の状況については、各地域ページでお伝えしています。

早い段階で着手すれば成功率は90%以上という統計データもあります。逆に、入札直前での着手では成立が極めて難しくなります。手続きの詳しい流れはS3 流れの記事へをご覧ください。

北海道で検討されている方へ

当社はオホーツク・旭川圏で、競売回避のための任意売却に対応しています。管轄裁判所の状況や地元金融機関との交渉について、エリア別にまとめています。

法律的な判断が必要な事項については、必ず弁護士・司法書士にご確認ください。

よくあるご質問

競売開始決定通知が届きましたが、まだ任意売却に切り替えられますか。

入札期日の前であれば可能です。ただし、買主を見つけて売買契約を締結し、債権者が競売を取り下げるまでの時間が必要です。通知が届いたら、すぐにご相談ください。

競売と任意売却で、信用情報への影響に違いはありますか。

どちらの場合も、ローン滞納の事実が信用情報機関に記録されます。記録期間は5〜7年程度で、この間は新たなローンやクレジットカードの審査が通りにくくなります。この点に違いはありません。

競売になると、家の中を見られるのですか。

裁判所の現況調査では、執行官と不動産鑑定士が室内に立ち入り、写真撮影を行います。この写真は調査報告書に添付され、BITで公開されます。この方法であれば、このような調査はありません。

家族や保証人への影響はどちらが大きいですか。

連帯保証人がいる場合、どちらの方法でも残債について保証人に請求される可能性があります。ただし、この方法のほうが売却額が高くなる分、残債が少なくなり、保証人への負担も軽減されます。


まとめ — 比較した先にある「判断」

任意売却と競売の違いは、数字で見れば明らかです。売却価格、残債、プライバシー、引っ越し——ほぼすべての面で、任意売却のほうが有利な条件を得られる可能性があります。

ただし、任意売却にも債権者の同意が必要、買い手が見つからなければ成立しないなどの制約があります。万能ではありません。それでも、競売との比較において検討する価値は十分にあります。

大切なのは、「知ったうえで判断する」ことです。お電話でも、メールでも、LINEでも構いません。まずは現状を整理するところから始めませんか。


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